ステンレス精密板金業界、原料高と需要の二重圧力に直面
Time : 23/03/2026

2026年、原材料価格の高騰が業界を直撃

2026年に入り、ステンレス精密板金業界は大きな転換期を迎えている。世界的なニッケル価格の高騰が業界全体に大きな影響を及ぼしており、特に精密板金加工においては、原材料コストの上昇が企業収益を圧迫している。

インドネシア政府が2026年のニッケル鉱石の採掘割当量を大幅に削減する方針を示したことを受け、LMEニッケル価格は急騰。2025年12月には1トン当たり14,000ドル前後だった価格が、2026年1月末には19,000ドル近くまで上昇した。この原料価格の高騰を受け、日本国内のステンレスメーカーも相次いで価格改定に動いている。

日本製鉄は2026年1月契約分の300系冷間圧延ステンレス鋼板および厚板、400系冷間圧延製品について、1トン当たり5,000円の値上げを発表。300系冷間圧延製品については、2025年8月契約以降4か月連続の値上げとなり、累計では3万円の上昇となった。また、日鉄ステンレスも同様に1月契約分のニッケル系ステンレス冷間圧延鋼板・鋼帯について5,000円の値上げを実施している。

薄物精密板金に特化した価格改定も

特筆すべきは、超薄物ステンレス鋼板における価格体系の見直しである。日本製鉄は2026年度から、厚さ0.1~0.2mm以下の薄物ステンレス鋼板の販売価格を大幅に引き上げる方針を決定した。同社は基本価格の値上げに加え、新たに「厚み幅代」を導入。これまで0.3mm以上の冷間圧延鋼板にのみ適用されていた厚み加算を、超薄物グレードにも拡大する。

この背景には、山口製作所周南地区に集中する薄物ステンレスの生産設備におけるコスト圧力の高まりがある。超薄物材料の製造には特殊な圧延設備と厳格な工程管理が必要であり、標準的な冷間圧延鋼板と比較して製造コストが著しく高い。過去4~5年の間に、物流費、副資材費、設備維持費、人件費が急激に上昇しており、価格改定がコスト上昇に追いついていない状況が続いていた。

中国市場の動向と輸出規制の影響

中国市場においても、ステンレス精密板金業界を取り巻く環境は大きく変化している。中国政府は2026年1月から、ステンレス製品の輸出ライセンス制度を新たに導入。コイル、フラット材、長尺製品のすべての海外出荷について政府承認が必要となった。

この政策変更に加え、インドネシアのニッケル鉱石割当削減が重なり、中国国内のステンレスメーカーは原材料確保に奔走している。特にステンレススクラップやニッケルピッグアイアンの需要が急増しており、調達競争が激化している。

一方、中国国内のステンレス生産は堅調に推移している。2026年1月のステンレス鋼生産計画量は340万6500トンに達し、前年同月比19.05%増加。内訳は、200系が103万3100トン(同34.08%増)、300系が176万3200トン(同12.58%増)、400系が61万200トン(同16.27%増)となっている。

業界の将来展望

こうした厳しい環境の中でも、精密板金業界には成長の兆しも見えている。中国の「新政策(大規模設備更新と消費財買い替え)」の正式実施により、新エネルギー車やロボットなどのハイエンド製造業における需要は底堅く推移している。特に、バッテリー材料や電子部品向けの薄物ステンレス需要は、電気自動車(EV)への移行に伴う内燃機関車向け需要の減少を補い、全体的に安定した需要が見込まれている。

長期的には、低価格競争からの脱却と高付加価値化が業界の重要な課題となる。環境規制の強化や炭素国境調整メカニズム(CBAM)の導入により、高炭素な海外製品に対する競争力が変化する可能性もある。精密板金加工企業は、技術力の向上と生産効率の最適化を図りながら、変革期を乗り越えることが求められている。

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